藤沢市図書館コンピュータ・システム基本構想(1984年)を見に、藤沢市総合市民図書館に行ってきた
概要
藤沢市図書館の「個人情報の取り扱いについて」で提示されていた「藤沢市図書館コンピュータ・システム基本構想」に興味を持ち、その内容と作成経緯について、藤沢市総合市民図書館で調査した。以下では構想の内容を紹介し、その基となった検討報告書や経緯紹介文献と時代背景について調査した結果を報告する。その検討には図書館関係者のみならず、多くの市民と有識者が関わり、当時最新の図書館の自由宣言に関する問題と議論が取り込まれていたことが判明した。現在のICT状況から見た評価というか感想めいたことについても簡単に触れる。
0. きっかけ
ツイッターTL中に図書館関係の話題がちらほらし、プライバシー方面もヲチしている毎日だが、先日ふと見た藤沢市の図書館サイトの「個人情報取り扱いについて」にびっくりした。
図書館のコンピュータは、プライバシーを守ります。
藤沢市図書館の運営は、コンピュータによりおこなわれています。
個人情報の取り扱いについて│藤沢市図書館
このコンピュータ・システムは、返却と同時に貸出記録を自動的に消去するなど、市民のプライバシーを守ることを大前提に設計されました。
日頃見るコピペポリシーとは一線を画する記述(これでいいのかという気もするが)。コンピュータ処理に限定し、「大前提」をビシっと言う。さらに根拠条例を示して、個人情報保護法(条例)制定前からやって自らに縛りを入れてると。そして驚くのが続きの記述。
なお市民のプライバシーを保護するために、次のような措置をとっています。
(中略)
個人情報の取り扱いについて│藤沢市図書館
・返却と同時に貸出記録は自動的に消去するシステムにする。貸出記録の蓄積はしない。
・利用者コードは図書館独自のものを与える。住民台帳その他、他のいかなるコードも使用しない。それらのコードと利用者コードは連結させない。
・本庁および民間計算センターのコンピュータは使用しない。図書館内にコンピュータをおき、図書館内部で完結したシステムを作る。利用者に関する情報は一切外部に出さない。
・利用者に関する情報が保護できない場合、他の機関とのオンラインは結ばない。
(中略)
『藤沢市図書館コンピュータ・システム基本構想』/1984年
現在のビッグデータ(笑)だのマイナンバー(死語)だのの問題でも言われるような懸念を回避する大胆な対応宣言。そして何よりも驚いたのが、この構想が奇しくもジョージ・オーウェルの小説の題名と同じ1984年という約30年前に提起されたということ。そのことをつぶやいたら反応が。
図書館の入り口にこの内容が掲示されているとのこと。すごい。そこまで徹底するか。てゆうか、この構想全文読みたくなった。そしてその背景とか色々知りたくなったので、帰省先近くの図書館である、本丸の藤沢市総合市民図書館に行って調べてみるという、夏休みの宿題をやることにした。
注意: この際バラしてしまうと、わしの実家は藤沢市にある(だが図書館は利用したことがない)。それによるバイアスがあることをご承知おきいただきたい。また、図書館学や図書館史についてはド素人である。
1. 前提知識と下調べ
神奈川県藤沢市ってどんなところ? というのは、まぁこれ見てちょ。
電縁都市ふじさわ|藤沢市ホームページ
藤沢市 - Wikipedia
それなりに歴史もあり、観光地も抱える一方で、東京のベッドタウンとして約42万人の人口を抱える。地形は南北に長く、鉄道駅も多い。Wikipediaによれば市民の自発的文化活動が活発とのこと。
そして図書館については、こちらを参照。図書館概要には統計も出ている。
藤沢市図書館トップページ
平成24年度 藤沢市図書館概要
藤沢市の図書館は、総合市民図書館の他に3つの分館(南市民図書館、辻堂市民図書館、湘南大庭市民図書館)と点字図書館(現在は総合市民図書館内に包含)、公民館等の一角に設けられた11の図書室で構成されている。こんなに館数が多いのかと驚かされるが、上で書いたように藤沢市の地形は南北に長くそれなりに広いことからそうなるようだ。これは図書館概要のp15「V 図書館サービス網図」を見るとよくわかる。また、同p49「図書館施設概要」を見ると、「図書館4館構想」というものがあり、各館の担当と役割に特色があることがわかる。
また、ゆきうさぎ, みんなの藤沢市図書館 〜としょかんグルメ!?〜, えのしま・ふじさわポータルサイト 市民記者コラムを見ると、選書の基準を公開しており、プライバシー保護が先進的だったことが「図書館学のテキストに載っている」とのこと。
2. 藤沢市総合市民図書館
以上を踏まえて、藤沢市総合市民図書館に向かった。湘南台駅徒歩10分とあるが、駅から直進する道はなく回り道しながら炎天下歩くのが嫌なので、路線バス(神奈中)湘07立場ターミナル行を使った(日中1時間に2本)。図書館前バス停で下車して目の前。市立中学校が隣接しているが、周りは閑静な住宅街。建物自体は築30年近く経っているので少々くたびれた感はあるが、中は広く堂々とした感じ。入館してすぐ右横に例の「図書館のコンピュータ・システム」が大きく掲示されているのを確認した。お盆休み中だからか、平日でも人が多い。だがそこは図書館、静寂は保たれていて、ほど良い緊張感が漂う。辺りを見回すと広いカウンター。その近くに検索用PC(Lenovo製)8台とタッチパネル式の検索機2台が1台づつついたてで区切られて設置されている。PCの検索はちょっと時代遅れ的なUIだが、タッチパネルのは今風のUI。自動貸出機はない模様。カウンターでの貸出は、本に付けられたバーコードを読み取って、本の背を横の機械にこすり付けていたが、出入口センサーを通すようにしているのだろうか。奥の壁に張り付いた書架は3mぐらいある高いもので、はしごが備え付けられていた(太い金属棒が横にはっていて、はしごはそこにひっかかっている)。上部の棚は細い金属棒で転落防止措置がなされていた(棚にくくられたフックに金属棒をかけるようになっていて、本を傷めずに取り出し可能)。
前もって、図書館HPで「藤沢市図書館コンピュータ・システム基本構想」と関係ありそうな書籍のありかを調べていたのだが、どれも「調査研究室」という一角にあるとのこと。入り口からカウンター沿いに右に曲がった場所にあり、上半分ガラスの壁で区切られた一角は、地域資料等が集中して収められた場所であった。入口と出口にゲートがあり、出口側には万引き防止と同様のアンテナが立っていた。机も用意されているが、席には番号が付けられていて、あらかじめ調査研究室のカウンターにいる司書さんに空いている席のカードをもらってから席につく。棚の配置は、HPの地域資料検索(藤沢市)の分類となっており、目的の資料はすぐに見つかった。
3. 「藤沢市図書館コンピュータ・システム基本構想」とご対面
23ページしかないB5サイズの小冊子だが、図書館側でハードカバーが付けられていた。奥付がなくて1984年に発行されたことしかわからない。紙はわら半紙よりちょっといいくらいの紙を山折して閉じられていた。文字は和文タイプで打ったのだろうか。さっそく見てみよう。目次は以下の通り。
I 藤沢市図書館コンピュータ・システムの理念
II 導入にあたつての基本方針
1 市民のプライバシーを保護する
2 システム・運営を公開する
3 市民サービスの向上
4 労働条件の整備・確保
III コンピュータ・システムの要件
IV 各システムの要件
1 資料検索システム
2 予約システム
3 貸出・返却システム
4 資料管理システム
5 統計作成システム
6 発注・購入管理システム
7 図書館案内システム
8 その他藤沢市図書館コンピュータ・システム基本構想 目次
ざっと見ると、IとIIは理念や基本方針といった高尚な内容を簡潔に、IIIとIVは調達仕様書の要求機能・性能のような内容が平易に(かつやたらプライバシーにこだわって)書かれている。
Iの理念は、全文コピペしたいくらいの出来(内容も良いが、実に無駄がない)。まず、図書館のコンピュータシステムは、「藤沢市の図書館サービスの理念」を市民サービスや図書館運営に、「いきいきと具体化させるひとつの手段,道具」として導入されるものとあり、「藤沢市の図書館サービスの理念」は、昭和57(1982)年に設置された「藤沢市新中央図書館建設計画検討委員会」(以下検討委員会)によって提起されたもので、以下のように要約されている。
藤沢市市民図書館システム(市民図書室,市民図書館,総合市民図書館,市民自動車図書館によつて構成される図書館サービス網の総体をさす。)は,市民憲章にもとづき「市民が創造するまち」,「市民の手で文化を受けつぎ生みだすまち」をめざして,
1 藤沢市民の幼児期から高齢期にいたるライフ・サイクル全体にわたり,創造性ゆたかな自己教育の場であり,
2 住民自治と地域文化の発展に寄与する自治体図書館としての特色ある固有性に立脚し,
3 情報社会化時代にダイナミツクに対応する「教育文化・情報のための民主的機関」(ユネスコ公共図書館宣言)である。
そして,その図書館サービスは,「いつでも,どこでも,だれでも,なんでも」の民主的サービス原則によつておこなわれる。藤沢市図書館コンピュータ・システム基本構想 p1
藤沢市市民憲章(昭和39年7月1日)からの展開は強引っぽくもあるが、生涯教育を先取りし、地域特性を意識し、世界・未来に向けた考えを表明しているなど、非常に意欲的に思える。そして、検討委員会はコンピュータの導入について、合理化のみを追求して定員削減・労働強化・労働条件の悪化を招くことに警告を発し、市民プライバシーの保護の必要性を説き、コンピュータ導入を慎重な配慮の下に進めるよう要請していると書いてあった。図書館職員の労働問題にまで言及していることに驚く。
上記「個人情報の取り扱いについて」に掲載されていた「措置」は、IIの基本方針に記載されていた。
1 市民のプライバシーを保護する。
検討委員会の指摘をまつまでもなく,読書は個人の内面に深くかかわる行為であり,市民が何を読んだか,何に興味を持つたか等の市民のプライバシーに関する事項は,絶対に外部にもらしてはならない。
日本図書館協会は「図書館は利用者の秘密を守る」ということを明記した「図書館の自由に関する宣言」を1979年,採択している。藤沢市図書館コンピュータ・システム基本構想 p3
「図書館の自由に関する宣言」の1979年の改定は、タイムリーな出来事だったようだ。この宣言のおかげで、説明は簡略化されているように思えた。
そして、「市民のプライバシーを保護するために,次の措置をとる。」として、上記に挙げた措置4項目((1)返却後貸出記録消去、(2)独自コードの採用、(3)独立システム構成、(4)オンライン接続条件)が列挙されているのだが、実は最後のオンライン接続条件は、以下のように記載されていた。
(4) 市民図書館システム以外にシステムを拡張しない。
利用者に関する情報が保護できない場合,他の機関(市内の文書館,点字図書館,県立図書館,国会図書館等)とのオンラインは結ばない。藤沢市図書館コンピュータ・システム基本構想 p3
ここで言う「オンライン」は他の機関のシステムが構築されたメインフレームとの間の専用線接続を想定しているようで、「他の機関」も限定的である。インターネット普及や近隣大学との連携といった時代の流れから、「拡張」せざるを得なくなり、「システム」の境界も曖昧になったことから、システム拡張しないという一文は「個人情報の取り扱いについて」では削除されたようだ。
「2 システム・運営を公開する」では、(1)で新しい図書館条例で利用者のプライバシー保護を市民に制約するとしており、もちろん今の「藤沢市図書館に関する条例」(昭和61年3月31日条例第36号)にもちゃんと書かれている。これは補足として東村山市立図書館の条例に先行事例があることを紹介している。また、
○ 現行の図書館法では,図書館の地方分権が明記されており,プライバシーの問題は自治体レベルでは解決可能だが,検討委員会の指摘にあるように,図書館の地方分権を否定するような動きが一部にあり,市民・職員の間に危懼が広まつている。将来,国による統制が強まり,自治体図書館に対する不当な干渉があつた場合,一定の歯どめとして条例は必要である。
藤沢市図書館コンピュータ・システム基本構想 p4
と補足されている(「図書館の地方分権を否定するような動き」については後述)。続く(2)ではシステムと利用者データの使用範囲の市民への周知、(3)では利用者本人への求めによる記録の開示、(4)では収集方針の公開等図書館のガラスばり運営による図書館に対する市民の信頼・支持を深めることが提示されている。
「3 市民サービスの向上」では、今回がコンピュータ初導入となるらしく、電算化のメリット(貸出待ち時間短縮により職員が市民サービスに専念できる等)が述べられている。時代を感じる。
「4 労働条件の整備・確保」では、
コンピュータは「職員に人間らしい職務の遂行を可能にするために」導入するのであつて,良好な労働条件を整備・確保することは,コンピュータ化にあたつての不可欠の条件となる。
藤沢市図書館コンピュータ・システム基本構想 p6
とし、「(1) 職員の確保」で検討委員会はシステムの成否はそこで働く職員にかかっており、システム稼動に足りる職員数を配置するよう要請し、電算化による余剰人員の問題は、今後の図書館への要求はますます増大し、その要望に答えるためには、コンピュータという道具だけでは達成できず、よく教育された職員が市民要求をうけとめて行う「手作業」であるから、電算化しても一定の人員が図書館には必要としている。「(2) 職業病の防止」ではいわゆるVDT障害の問題を提起し、採用機材や設置状況、一定の休息や健康診断等の実施を要望している。「(3) 全ての職員が操作する」では、操作可否により職員の階層分化が生じるのは民主的運営から見て好ましくないとして、操作の容易性と全職員が使用することを求めている。操作の容易性は良くある話だが、その理由をそこに求めるかという気も。
IIIの要件はコンピュータシステム全体への大雑把な機能・性能要件で、想定利用者数に耐えられる性能を求めたりというものでわりと普通で、官庁の調達仕様書に書かれているような内容。漢字が利用可能であることという一文が時代を感じる。
IVはサブシステム毎の要件で、○○を入力したら○○できることといった内容の羅列。業務特有の要件もあるが、プライバシーに関わる機能は説明が補足されている。例をいくつか挙げる。
2 予約システム
(中略)
(3) 入手できた予約本のラベルをなぞるだけで
誰 が
い つ
どこの館で
予約したか即座にわかること。複数の予約者がある場合は,その順位も,予約時期によつて自動的に確定すること。
また,連絡用の
電 話
住 所
があわせてわかること。
(4) 連絡した際,利用者は何を予約したか忘れていて,逆に照会をうけることもあるので,照会プログラムで
誰 が
何 を
い つ
どこで
予約したかわかるようにしておく。
(5) (3)および(4)の作業は,プライバシーの問題があるので,第三者の目のあるサービス・デスクでは注意が必要である。
業務室で行うのがのぞましい。
(6) 誰が何を予約したかという記録は,提供後,統計をとつたならば消去する。藤沢市図書館コンピュータ・システム基本構想 p14-15
3 貸出・返却システム
このシステムは,利用者のプライバシー保護を最優先に考えなければならない。
(1) 登 録
1)登録の際の利用者のデータは必要最低限にする。
氏 名
住 所
電 話
性 別
利用者区分 幼児,小学生,中学生,高校生,
その他学生
勤人,自営業,自由業,無職
2)利用者区分は,統計,サービス分析に必要なものを採用すべきだが,プライバシーの問題があるので,前項のような抽象的な概念にとどめる。生年月日や年齢を聞かないことにする。藤沢市図書館コンピュータ・システム基本構想 p15-16
5 統計作成システム
(中略)
(3) 利用者に関する統計
1)地域別に登録状況が出力できること。
図書館地域計画の基礎資料になる。
2)利用層の分析
登録の際の「利用者区分」で利用者層の分析が可能になる。「利用者区分」を詳細に設定すれば,その分,詳細な分析が可能になるが,プライバシーの問題があるので,P.22のような抽象的な概念にとどめる。
(例) 湘南台中に隣接したため,登録者のうち,中学生の占める割合が40%をこえた。
→蔵書の見直し
サービスの見直し藤沢市図書館コンピュータ・システム基本構想 p19-21
ずいぶんと思い切った内容に思える。統計情報に気を使うのは、特定利用者区分の人口が少ない場合を想定しているのだろうか。当時の地区人口や年代比率を調べておくべきだったorz
4. これが書かれた背景は?
背景を探すべく、調査研究室内の文献を探したところ、1986年の総合市民図書館開館に合わせて図書館が発行した「新総合市民図書館の建設―その経過と考え方―」(以下「経過と考え方」)という冊子に経緯が書かれていた。
元々中央図書館が市南東部にあり、各地区の公民館等の一室に図書室が設けられていたが、東京のベッドタウン化が進んで人口増加に伴い利用者も増えたが、増大する蔵書も抱えきれなくなって閲覧室をつぶして書庫を増設する事態となり、また市北部等広域な人口増加に伴い南部の図書館が利用しにくく、地区図書室や自動車図書館でも捌けなくなったこと、そして職員の負荷も増大してサービス低下を招いたことから、市民の側から図書館の増強の声があがり、1980年には「藤沢市中央図書館新設を促進する市民の会」が「藤沢市図書館新設促進に関する要望(現状と改革の提案)」を市長に提出した。
これを受けて図書館と市も検討を進めるため、藤沢市の図書館の在り方を検討すべく、1982年に市長が「新中央図書館建設計画検討委員会」(以下検討委員会)を設置した。検討委員会は市外図書館視察や市長インタビュー等を行い検討を進め、同年10月報告書(本文、参考資料)を作成して市長に報告した。報告書本文の目次は以下。
1 「市民参加と連帯でつくるまち」藤沢市における市民図書館システム
―藤沢市図書館活動のこれまでとこれから
2 サービス網計画
(1) 市民図書館の拡充
(2) 市民図書館の新設
(3) 市民自動車文庫
(4) 藤沢市総合市民図書館
3 総合市民図書館に期待される機能
(1) システムの総合調整機能
(2) 多面的需要に応じる蔵書構築
(3) 情報の検索機能
(4) 集中受入・目録作業
(5) 参考調査(レファレンス)機能
(6) システム内所蔵資料の保存機能
(7) The Fujisawana(藤沢資料)の整備
(8) 視聴覚資料センター機能
(9) 障害者に対する集約的サービス機能
(10) 遠隔居住者のためのサービス補完機能
4 総合市民図書館施設の基本構想
(1) 総合市民図書館の規模
(2) 階構成と施設内容
(3) 施設としての配慮すべき事項
5 おわりに藤沢市新中央図書館建設計画検討委員会検討結果報告書 目次
報告書を見ると、検討委員会は、裏田武夫東京大学教授(東京大学付属図書館長)を委員長とし、他に図書館関係者、小・高校教員、大学教員(新設促進要望を出した信夫清三郎名古屋大学名誉教授も参加)、ボランティア、婦人団体、障害者団体、市在住の作家・評論家(いいだもも、紀田順一郎、佐江衆一)、及び市関係者(助役、企画調整局長、建設局長、教育委員会教育長)の計19名で構成された。首都圏に近く市内に有識者がいたせいか、(ちょっと左寄りじゃないかとも思えるが)かなり豪華なメンバーに思えるが、コンピュータ導入についての有識者(技術者・研究者)はおらず、またプライバシー問題に明るい法律関係者もメンバーにいなかったのが気になる。市民と図書館間の在り方を考えるには十分だという判断なのかもしれないが。
この報告書では、現状分析を受けて、サービス網拡充計画、サービス網の総合調整・集中受入目録作業等を行う総合市民図書館の機能、総合市民図書館の施設基本構想を提言し、「おわりに」に総合市民図書館の十分な敷地の確保、職員数の確保と適切な処遇、コンピュータ導入に伴う職員労働環境悪化と市民プライバシー侵害への警告と慎重な検討、開館日・時間の拡大を要望として追記されていた。藤沢市の図書館はまだコンピュータ導入されていなかったが、サービス拡充に伴い蔵書も8万冊から20万冊に一気に増やして今後市全蔵書数が85万冊にもなると見積もられたことから、コンピュータ導入は必須となった。導入のメリットに期待する一方で検討委員会は、以下のように警告した。
第三は,図書館業務の機械化,とくにコンピュータ導入に関することである。
(中略)しかし本来,機械化は職員に人間らしい職務の遂行を可能にするため,ひいては単純なくりかえし業務に忙殺されず利用者に対して暖かく応対できるというのが出発点である。この原則をはずれ,いたずらに「巨人の合理化」のみを追求し,定員の削減・労働強化・労働条件の悪化を招来するならば,市民と職員の活力をうばう本末転倒の結果を招くことにあるであろう。
コンピュータ導入にあたっては,市民のプライバシーはかたく守らなければならないものであり,個人の貸出に関する情報記録は,図書館自体の責任において絶対外部にもれることのないよう扱わなければならぬものである(資料6:日本図書館協会図書館の自由に関する調査委員会,貸出し業務へのコンピュータ導入に伴う個人情報の保護に関する基準(案))。
したがって,コンピュータの導入はきわめて慎重な配慮の下に進めることを希望したい。藤沢市新中央図書館建設計画検討委員会検討結果報告書 p19-20
かつてのコンピュータ化進展イコールディストピアな世界のイメージが強かった時代という気もしないでもないが、当時図書館へのコンピュータ導入において懸念が払しょくできない状況であったことが伺える。プライバシー問題に目を向けると、資料6の基準案は日本図書館協会(以下JLA)総会で2年後の1996年5月に決議されており、JLAの最新の問題意識と検討状況が委員にはインプットされていたことがわかる。そして「藤沢市図書館コンピュータ・システム基本構想」に挙げられたプライバシーの基本方針は、このJLAの「貸出し業務へのコンピュータ導入に伴う個人情報の保護に関する基準」に沿った内容であることがわかる。だが報告書は、検討前の1964年の「宴のあと」裁判東京地裁判決等の事例や、1980年のOECDガイドライン採択等世界の潮流を挙げることなしにいきなりプライバシーの話を持ち出しており、論理展開が弱い感じが拭えない。OECDはまだしも、「宴のあと」は図書館プライバシーとは無関係と言い切れるのだろうか。検討委員会メンバーの図書館関係者がJLAで研究したプライバシー問題を提起したのではないか。
「経過と考え方」の話に戻る。検討委員会の検討より前に図書館側でもコンピュータ導入のスタディを市役所の電算室(藤沢市は会計、税務、病院事務等が早い時期から電算化されていた)から受け、近隣諸都市の導入計画や運用状況を調査していた。そして検討委員会の報告書を基に館内にプロジェクトチームを立ち上げ、業務の見直しと検討を進め、市の電算室との討議のみならず、職員労働組合とも協議を行ったとのこと(組合でも自治体業務の電算化問題について独自の研究や討議を進めていた)。そしてコンピュータ導入にあたっての基本方針をまとめ上げ、コンピュータ業務機能をまとめたものが、問題の「藤沢市図書館コンピュータ・システム基本構想」であり、この構想を基にメーカーにシステム開発を依頼したのであった。
さらに図書館は、コンピュータ導入と市民のプライバシー保護についての図書館の姿勢を利用者の前に明示、ひいては図書館利用者である市民との合意が必要であるとして、「藤沢市図書館コンピュータ・システム基本構想」を1984年に冊子にまとめ、秋から図書館窓口に置いて配布した。図書館の周知はそれだけではなく、1985年1月発行の「図書館だより」に「特集 図書館とコンピュータ」を掲載し、コンピュータ・システム基本構想を解説した。そして1986年に開館した総合市民図書館の入口には、プライバシー保護に関する説明を記した「図書館のコンピュータ・システム」のプレートが設置された(先のツイートで教えていただいた掲示板の写真はこれである)。
そして、先の「図書館だより」には、以下のように書かれていた。
市民 この構想に従えば、私たちのプライバシーは守れるわけですか。
職員 自治体レベルではこれで大丈夫と思います。将来、自治体の図書館に対する国の管理が強まれば話は別ですが、現行の図書館法はそういうことを否定しています。
昭和57年に「図書館事業基本法」という方案が一部の図書館関係者や国会議員によって準備されましたが、図書館の国家管理に道をひらくものとして、各方面から批判され、結局、棚上げになりました。今後また、こういう動きが出てこないともかぎりません。自治体図書館の職員として、国の図書館政策には今後とも関心をよせていきますが、市民のみなさんも関心を持っていただけたらばと思います。
市民 わかりました。プライバシーの問題は、自治体図書館と市民の力で最終的には守っていくということですね。特集 図書館とコンピュータ - 「図書館だより」第77号(昭和60年1月10日発行) p2
先に「「図書館の地方分権を否定するような動き」は後述」と言ったのはこれである。ちょっとググってみると、「図書館事業基本法」は前年の1981年から話が出て、翌年批判が多くてポシャったらしく、司書の配置の義務化等いい点もあったのにサヨクが潰したという内容のブログ記事もあった。だが当時の図書館関係者としては、考え方は一様ではなかったものの、図書館に対する危機が目前に迫っていると感じたことが、JLAの図書館の自由に関する諸決議を前面に出すことにつながったのではないかと思えた。一方で基本法にあった司書配置の義務等について、図書館員の配置や労働環境についての要望という形で検討委員会報告書に取り込んでいた。検討委員会報告書の最後に「おわりに」の要望としてプライバシーや職員待遇の話がとってつけたようになっているのは、意見の異なる図書館関係者への配慮からかもしれないとも思った。
5. 藤沢市図書館のその後
総合市民図書館の開館は、当時全国レベルで話題になったようだ。最初の図書館システムはIBMのメインフレーム(S/38)で構築され、オンラインは南市民図書館のみであった。その後1990年に県立図書館(公衆電話による県への接続のみ)、1991年に慶應大(端末相互設置)、1993年に辻堂市民図書館、1994年に日大(端末相互設置)とのオンライン接続が進んだ。1996年にはホストがIBM AS/400にリプレースされたが、これと前後して新市長が図書館協議会に「図書館総合情報システム」を諮問し、1998年「図書館総合情報システムについて」が図書館協議会から答申された。1999年には図書館新情報システムがスタートしてインターネットでの蔵書検索ができるようになった。
検討委員会は市内の主要図書館として4館を構想しており、総合、南の新築はバブル景気直前だったためかスムーズにいったものの、バブル崩壊後は辻堂は間に合ったものの、最後の湘南大庭市民図書館は完成までに少し時間を要したようだ(市長も革新系の葉山峻から変わったことも影響?)。
だが2000年に湘南大庭市民図書館が開館して検討委員会が想定していた4館構想が実現した。
図書館システムのインターネット対応も進められ、市民図書室にも業務用インターネットPCが置かれるようになった。2009年にはRFIDタグによるブックディテクションシステム(盗難防止装置)が本格稼働された。
一方で、2009年には事業仕分けの波が自治体にも押し寄せて、総合市民図書館の運営費も対象になったが、「現状維持」を勝ち取った。またNPO法人への業務委託が検討されるようになり、藤沢市図書館関係者が中心となったNPO法人「市民の図書館・ふじさわ」が結成(理事長は検討委員会のメンバーだった平塚禅定(委員時は神奈川県立東金沢高校教頭・鶴見大学図書館学講師))され、2011年に辻堂、2012年に湘南大庭の業務が委託された。尚、指定管理者制度の適用は当初から考えられていなかった模様で、市の「藤沢市新総合計画」でも「NPO法人への業務委託推進」とされた。
2012年には図書館システムのリプレースがなされたが、IBM eServer iSeriesをサーバとしたCLIS/400(横須賀のサン・データセンター社製で、IBMもこのパッケージを担いでいる)が採用されたようである。
6. そして現在の視点から見てどうか
さて検討委員会の構想やコンピュータ・システム基本構想がどれくらい今も生きているか振り返ってみる。サービス網は達成され今でも十分と思えるが、開館時間は17時閉館の日も残っており、長くても19時閉館というのは残念である。職員数は他の自治体と比較すれば恵まれているかもしれないが、現実の職員の負荷と力量はわからない。
コンピュータシステムについてはどうか。ベンダロックインを排除するような内容も書かれていたが、結局IBMのシステムを採用し続けている。オンライン接続制限については、大学との接続は「トラスト・ミー」でも許されるかもしれないが、インターネットの潮流に抗することはできなかった。本庁と独立したシステム構成は今もかたくなに守られているが、クラウド化(パブリックor自治体クラウドへの参入)に支障をきたす内容となっている(公共図書館で組合を作ってプライベートクラウドを構築なら可能?)。独自コードの採用はまだ守られているようで、多目的で使えないかというマイナンバー法のフラット派vsセクトラル派の議論を想起する。返却後貸出記録消去ポリシーは、JLAの基準から導出されたものの、履歴を捨てるなんてMOTTAINAI! 利用者のために活用できるのにという意見(例えば、渡邉斉志(国立国会図書館), 知的自由の陥穽 : 利用情報保護思想が公立図書館に及ぼす影響の分析, Library and Information Science, 慶應義塾大学三田図書館・情報学会, No.58, 2007, p.103-115)もあり、もしかしたら「削除するというリスク回避をとっていると、図書館職員は利用者情報を大事に扱うという意識が薄れるのではないか」という考え方もあるかもしれない。また一方で盗難防止のために本にRFIDタグが貼られるようになった(だが自動貸出機未導入)が、これは10年前だかのプライバシー議論を想起させるが、これは1984年の基本構想策定当時は想定できなかった新たなプライバシー問題である。JLAは「貸出し業務へのコンピュータ導入に伴う個人情報の保護に関する基準」を見直せていないようだが、難しい問題であろうし、今まさに図書館の今後は議論の真っ最中ということなのだろうと思う。
だが、今の状況を考えると、古典ではあるが「藤沢市図書館コンピュータ・システム基本構想」や検討委員会の報告書等関連資料は一読に値すると思われる。検討当時図書館員が危機を持っていた相手は、ビッグブラザー化する国家であった。しかし時代は移ると、ビッグブラザー国家のみならず、リトルシスターとして某C社のような民間企業、はたまた自治体まで想定しなくてはならなくなったようだ。プライバシー問題ではなく検閲にあたる内容が、今回の調査中にも、こんなことが起こった。だからこそ基本構想や関連資料を読み、当時何が問題で、何が必要と考え、何を恐れていたのかを理解することは重要だとは思う。当時の藤沢市は、時期的、地理的、歴史・文化的、財政的、政治的に、現在の他の自治体と比較して、新図書館設立に優位な状況だったかもしれない(そのためサービス網と必要機能の論理展開はスムースで、市長も議会も前向きだったのはこのことが大きかったと思う)が、市民の側からの活動や図書館からの発信については参考になると思う。
7. まとめ
「藤沢市図書館コンピュータ・システム基本構想」に興味を持ち、その内容と作成経緯について調べてみた。その検討には多くの市民と有識者が関わり、JLAの図書館の自由宣言に関する問題とその議論が最高潮であった時期であったことも手伝い、意欲的な内容に仕上がった。出来上がった構想もその理解を市民に求めるために図書館側も積極的に情報発信し、その後インターネット普及の波にのまれつつも、今もその構想は図書館に生き続けていることがわかった。ICT技術の発展で当時想定できなかった問題が多々あり今も議論が続いているが、基本構想とその検討経緯は、今見ても十分参考に値するものがあると考える。
尚、藤沢市図書館の現在の評価や、他の自治体の図書館の取り組みは未調査である(一般の図書館学に関する書籍は読んでいない)。これはみなさんへの宿題としておく(キリッ。
付録:藤沢市図書館関係史
本文中の資料の他、以下の参考資料とWikipediaを基に作成。
南亮一(国立国会図書館), 図書館の自由--「図書館の自由に関する宣言1979年改訂」の再確認--, 2005年11月13日, 2005年度中堅職員ステップアップ研修(1)
容疑者と被害者情報漏らす 報道機関に東金市立図書館 - 47NEWS(よんななニュース)
IPSJコンピュータ博物館 - 情報処理学会
年 | 藤沢市と市図書館の動き | 日本と図書館界の動き | ICT史 |
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1946 昭21 | 飛嶋繁市長就任 | ||
1947 昭22 | 片山哲内閣(5/24) | ||
1948 昭23 | 伊沢十郎市長就任 図書館設立認可 一戸一冊献本運動実施 創立開館 | 芦田均内閣(3/10) 第2次吉田茂内閣(10/15) アメリカ図書館協会「図書館の権利宣言」 | |
1950 昭25 | 「図書館法」公布 | Eckert-Mauchly社、世界初の商用コンピュータUNIVAC Iを完成 | |
1952 昭27 | 金子小一郎市長就任 | 埼玉県公共図書館協議会から日本図書館協会(以下JLA)に「日本図書館憲章制定促進について」の申し入れ | |
1954 昭29 | JLA「図書館の自由に関する宣言」全国図書館大会で採択 第1次鳩山一郎内閣(12/10) | 富士通、日本初の実用リレー式計算機FACOM 100を完成 | |
1955 昭30 | 文部省、不良出版物を取り締まる意向表明 | ||
1956 昭31 | 石橋湛山内閣(12/23) | ||
1957 昭32 | 長後分館開館 | 第1次岸信介内閣(2/25) | |
1960 昭35 | 第1次池田勇人内閣(7/19) | ||
1961 昭36 | 中央公論社事件 思想の科学事件 | ||
1963 昭38 | 新中央図書館新築開館 | NEC、Honeywellよりの技術導入からなるNEAC-2400, 3400, 2800, 3800発表 | |
1964 昭39 | 「東京都青少年健全育成条例」制定 「宴のあと」裁判東京地裁判決 第1次佐藤榮作内閣(11/9) | ||
1965 昭40 | DEC PDP-8発表 | ||
1967 昭42 | 練馬テレビ事件 | IBM藤沢工場完成 | |
1968 昭43 | 市長選で金子小一郎が市議会における批判者であった葉山峻(日本社会党会派所属)を退け再選(5期目) 長後分館を廃止し、長後行政センター(現長後市民センター)に図書室開設 | IBM S/360発表 | |
1969 昭44 | 自動車文庫「そよかぜ号」運行開始 (以後計3台体制に増備・更新) | DoD ARPANET構築 CODASYL COBOL仕様標準化 Bell研UNIX開発 | |
1970 昭45 | IBM S/370発表 DEC PDP-11発表 | ||
1971 昭46 | 複写サービスを開始 | Intel 4004開発 | |
1972 昭47 | 金子小一郎市長勇退。市長選で葉山峻が当選。以後市長在任中は文化都市を標榜し、衆院選立候補の1996(平8)年まで革新系市長として6期務める | 第1次田中角榮内閣(7/7) | B.W.KernighanとD.M.Ritchie、C言語を開発 |
1973 昭48 | 辻堂(現明治)市民センター図書室、専任職員による貸出開始 自動車文庫「そよかぜ2号」運行開始 | 山口県立図書館図書抜き取り放置事件 『目黒区史』回収問題 JLA自由宣言再確認決議採択 JLA「図書館の自由に関する調査委員会」設置決定 | |
1974 昭49 | 片瀬市民センター図書室、専任職員による貸出開始 | 東村山市図書館設置条例で「利用者の秘密を守る義務」を条文化 三木武夫内閣(12/9) | IBM SNA発表 Intel 8080開発 |
1975 昭50 | 点字図書館開館 長後市民センター図書室を「長後市民図書室」として整備開始 | JLA「図書館の自由に関する調査委員会」発足 | IBM、研究所機能を藤沢工場敷地内に移転 |
1976 昭51 | 遠藤図書室、専任職員による貸出開始 辻堂(現明治)市民センター図書室を「辻堂(現明治)市民図書室」として整備開始 | 名古屋市立図書館『ピノキオ』事件 福田赳夫内閣(12/24) | NEC TK-80発表 |
1977 昭52 | 配本車「そよかぜ3号」購入 中央館の一般閲覧室を資料室に改造 六会図書室、専任職員による貸出開始 | Apple Apple II発表 DEC VAX-11/780発表 | |
1978 昭53 | 辻堂市民センター(新設)に「辻堂市民図書室」開設 中央館に郷土資料室(閉架式)設置 | 第1次大平正芳内閣(12/7) | IBM S/38発売 Intel 8086発表 |
1979 昭54 | 六会図書室を整備し、「六会市民図書室」として全日開館実施 善行市民センター(新設)に「善行市民図書室」開設 | JLA「図書館の自由に関する宣言」改訂定期総会決議 | NEC PC-8001発表 |
1980 昭55 | 御所見図書室を整備し、「御所見市民図書室」として全日開館実施 中央図書館内に仮設書庫(開架)設置 「藤沢市中央図書館新設を促進する市民の会」(代表: 信夫清三郎名古屋大学名誉教授)が「藤沢市図書館新設促進に関する要望(現状と改革の提案)」を市長に提出(サービス網の拡充、蔵書の増備、職員の強化等)し、市議会に陳情(全会一致採択) 市図書館協議会「新中央図書館建設促進について(要望)」を教育長に提出 中央図書館と市企画課、公共建築課、教育総務課が図書館調査プロジェクトチーム結成し6ヶ月間調査 | JLA「図書館員の倫理綱領」定期総会承認 鈴木善幸内閣(7/17) OECD Guidelines on the Protection of Privacy and Transborder Flows of Personal Data採択 | 日立ベーシックマスターレベル3発表 沖if800発表 |
1981 昭56 | 中央図書館内に視聴覚ライブラリー設置 鵠沼公民館(改築)に「鵠沼市民図書室」開設 「そよかぜ2号」更新、運行開始 | 愛知県立高校図書館選書介入問題 「図書館事業基本法案」が一部図書館関係者や超党派国会議員の図書議員連盟により準備(図書館の国家管理につながるとの批判があり、翌年棚上げ) | NEC PC-9801発表 Sun Sun-1発表 |
1982 昭57 | 片瀬、遠藤、藤沢の各図書室を整備し、嘱託配置による市民図書室として開設 中央図書館プレハブ倉庫設置 新中央図書館建設計画検討委員会(委員長: 裏田武夫東京大学教授・東京大学付属図書館長、他18名(図書館関係者、小・高校教員、大学教員(新設促進要望を出した信夫清三郎も参加)、ボランティア、婦人団体、障害者団体、市在住の作家・評論家(いいだもも、紀田順一郎、佐江衆一)、市職員で構成))設置 10月検討委員会市長報告(サービス網拡充計画、サービス網の総合調整・集中受入目録作業等を行う総合市民図書館の機能、総合市民図書館の施設基本構想、その他要望(総合市民図書館の十分な敷地の確保、職員数の確保と適切な処遇、コンピュータ導入に伴う職員労働環境悪化と市民プライバシー侵害への警告、開館日・時間の拡大)) | 第1次中曾根康弘内閣(11/27) | |
1983 昭58 | 市民図書室日曜開館開始 「そよかぜ1号」更新 運行開始 総合市民図書館(仮称)建設場所決定 | 品川区図書館蔵書リスト提出要求事件 | Apple Lisa発表 Microsoft Windows発表 Xerox社PARC、Ethernet開発 UC Berkeley、TCP/IPを導入したUNIX4.2BSDを発表 |
1984 昭59 | 総合市民図書館(仮称)建設場所取得 総合市民図書館(仮称)建築設計競技審査会(デザインコンペ) 「藤沢市図書館コンピュータ・システム基本構想」を希望する市民に配布(秋) 総合市民図書館(仮称)建設工事着工 | 広島県立図書館蔵書廃棄事件 JLA「貸出業務へのコンピュータ導入に伴う個人情報の保護に関する基準」総会議決(5月)(利用者の秘密保護がコンピュータ導入後も変わらないことを確認) 世田谷区議会における読書会「偏向」発言 | IBM PC/AT発表 Motorola 68020発表 Apple Machintosh発表 |
1985 昭60 | 「図書館だより」第77号(1月)に「特集 図書館とコンピュータ」掲載し、コンピュータ・システム基本構想を解説 総合市民図書館(仮称)収集方針決定及び公開 南市民図書館(仮称)設置検討委員会が検討結果報告 | プラザ合意(バブル景気の引き金) | Intel 80386DX発表 IBM、研究所機能を大和開発研究所に移転 |
1986 昭61 | 図書館条例全面改正議決 旧中央図書館を南市民図書館として仮開館 湘南大庭市民図書室開室 総合市民図書館完成(5/31)・開館(10/25) 図書館システムはIBM S/38(CPU IBM 5381)、オンラインは総合〜南間のみ 「新総合市民図書館の建設―その経過と考え方―」(藤沢市総合市民図書館)発行(10/25) | SONY NEWS発表 IBM OS/2発表 SHARP X68000発表 | |
1987 昭62 | 南市民図書館開館 「藤沢市個人情報保護条例」公布 | 竹下登内閣(11/6) | 富士通FM-R発表 EPSON PC-98互換機発表 |
1988 昭63 | 片瀬市民図書室整備開室 村岡市民図書室整備開室 | 絵本『ちびくろサンボ』と人種差別の問題 | IBM AS/400発表 |
1989 平元 | 明治市民図書室整備開室 御所見市民図書室整備開室 | 宇野宗佑内閣(6/3) 第1次海部俊樹内閣(8/10) | Sun SPARCstation 1発表 NEC PC-9801N発表 |
1990 平2 | 「そよかぜ2号」(2,800cc)運行開始 神奈川県図書館ネットワーク(KL-NET)に加入 辻堂方面市民図書館建設計画検討委員会の開催 辻堂方面市民図書館基本、実施設計委託(〜翌3月) 六会市民図書室整備開室 辻堂方面市民図書館建設用地取得 | 大蔵省総量規制(バブル崩壊の引き金) 富山県立図書館『図録』損壊事件 | |
1991 平3 | 慶應義塾大学湘南藤沢メデイア・センターとの相互協力開始 辻堂方面市民図書館建設工事着工 辻堂市民図書室整備開室 「そよかぜ1号」(3,700cc)運行開始 | 宮澤喜一内閣(11/5) | Tim Berners-Lee、CERNにてWWW(World Wide Web)をはじめて公開 |
1992 平4 | 市長選で葉山峻が山本捷雄(元藤沢市議会議長)を退け再選(6期目) | ||
1993 平5 | 辻堂市民図書館建設工事竣工(2月)・開館(7月) 長後市民図書室、長後市民センター改築に伴い長後コミュニテイホール内に仮設 藤沢市図書館に関する条例全面改正 | 細川護熙内閣(8/9) | Intel Pentium発表 NCSA Mosaic α版公開 |
1994 平6 | 日本大学農獣医学部(現生物資源科学部)図書館との相互協力開始 | 羽田孜内閣(4/28) 村山富市内閣(6/30) ユネスコ公共図書館宣言 | |
1995 平7 | 長後市民図書室新築オープン 南市民図書館改修工事 西部方面市民図書館建設計画検討委員会設立 | ||
1996 平8 | 市長選で山本捷雄が現職後継候補を退け当選(2月、2008年まで3期) 市が「藤沢市地域情報化基本計画」策定(3月) 図書館協議会に「図書館総合情報システム」を諮問(8月) 藤沢市西部方面市民図書館建設計画検討委員会検討結果(基本構想)を教育長を報告 藤沢市ホームページ開設(10月) 図書館システムをIBM AS/400にリプレース。オンラインは総合〜南、辻堂、慶應大、日大間。慶應大、日大OPAC端末用回線、県立図書館端末用KL-NET回線引込 | 第1次橋本龍太郎内閣(1/11) | |
1997 平9 | 自動車図書館「そよかぜ号」廃止 (仮称)湘南大庭市民図書館建設基本設計書完了 湘南大庭地区自治会長、図書館建設概要説明会実施 図書館ホームページ開設 | 少年法違反の疑いがある報道の掲載資料の取扱いの問題(〜1998) | |
1998 平10 | 「図書館総合情報システムについて」が図書館協議会から答申(当時のシステム構成記述あり。インターネット利用等オンライン先拡大を要望) (仮称)湘南大庭市民図書館地元説明会 週2回(火・金)の夜間開館(PM7迄)開始 (仮称)湘南大庭市民図書館建設工事開始 | 小渕恵三内閣(7/30) | Google設立 |
1999 平11 | 図書館新情報システムがスタート。インターネットでの蔵書 検索開始 (仮称)湘南大庭市民図書館建設工事竣工 | IFLA図書館と知的自由に関する声明 | |
2000 平12 | 湘南大庭市民図書室閉室 湘南大庭市民図書館開館(4館構想の完成) 湘南工科大学附属図書館との相互利用開始 | 第1次森喜朗内閣(4/5) | IBM eServer iSeries発表(AS/400改称) |
2001 平13 | 市が「藤沢市地域IT基本計画」策定(3月) | 第1次小泉純一郎内閣(4/26) 船橋市西図書館蔵書破棄事件 | |
2002 平14 | 図書館、情報サービス機関および知る自由に関するグラスゴー宣言 | ||
2003 平15 | 鵠沼図書室移転 「藤沢市個人情報の保護に関する条例」公布 | 「個人情報の保護に関する法律」公布 | IBM、HDD事業を担う藤沢工場を日立に売却 |
2004 平16 | 「藤沢市個人情報の保護に関する条例」施行 月末開館開始 遠藤市民図書室改築移転 | ||
2005 平17 | 会議室・ホール等有料化開始 図書館ホームページリニューアル インターネットおよび、館内利用者検索端末機より資料予約サービス開始 | 「個人情報の保護に関する法律」本格施行 船橋市西図書館蔵書廃棄事件最高裁判決「公立図書館は,住民に対して思想,意見その他の種々の情報を含む図書館資料を提供してその教養を高めること等を目的とする公的な場」 | |
2006 平18 | 市が「藤沢市地域IT基本計画」改定(3月) 市がISO/IEC27001(ISMS)認証取得(8月)(図書館は適用外?) 市民図書室でのインターネット予約資料受取サービス開始 図書館貸出資料の市民図書室返却受取サービス開始 明治市民図書室改築 | 第1次安倍晋三内閣(9/26) | |
2007 平19 | 返却督促を葉書からEメールに変更 サービス拡大(貸出点数・貸出期間の増加、映像資料の予約点数の増加、総合市民図書館の休館日を第2・第4水曜日として月曜開館) 11市民図書室に業務用としてインターネットパソコンを設置 | 福田康夫内閣(9/26) | |
2008 平20 | 市長選で海老根靖典(前自民党所属市議、選挙時は自民党非公認)が元自民党県議らを僅差で破り当選 総合市民図書館で蔵書盗難事件が発生(4/21)、藤沢北警察署が犯人逮捕 点字図書館、総合市民図書館内に移設 | 麻生太郎内閣(9/24) | IBM Power Systems発表(iSeries後継) |
2009 平21 | 総合市民図書館・南市民図書館・辻堂市民図書館でブックディテクションシステム(盗難防止装置)本格稼働(湘南大庭市民図書館は導入済) メールレファレンス開始 藤沢市図書館中期計画策定(平成21年度〜平成23年度) 藤沢市「事業仕分け」26事業に「総合市民図書館管理運営費」対象となる(結果: 現状維持) | 東金市立東金図書館、5歳女児殺害事件の容疑者と被害者の図書館利用情報を報道機関に漏洩 鳩山由紀夫内閣(9/16) | |
2010 平22 | 市行政改革特別委員会において、「藤沢市経営戦略プラン」の「NPO及び市民活動団体等との協働事業の推進」の取組項目として、「新たな図書館の経営体制の構築」が、「スポーツ施設・図書館等公共施設の相互利用の拡充」の取組項目として、「図書館の相互利用の拡大」が提案 「NPO法人 市民の図書館・ふじさわ」設立登記 | 岡崎市立中央図書館事件 菅直人内閣(6/8) | |
2011 平23 | 市が「藤沢市IT推進指針」策定(3月) 総合市民図書館・辻堂市民図書館の駐車場有料化開始 「藤沢市新総合計画」発表(4月)(図書館関係では、NPO法人への業務委託推進、南市民図書館老朽化に伴う再整備、「次世代図書館」構築の検討) 辻堂市民図書館のサービス業務を「NPO法人 市民の図書館・ふじさわ」に業務委託 多摩大学湘南キャンパス図書館との相互利用開始 | 野田佳彦内閣(9/2) | |
2012 平24 | 市長選で鈴木恒夫(自民党前神奈川県議会議員)が現職を退け当選 長期延滞者に対する利用制限開始 湘南大庭市民図書館のサービス業務を「NPO法人 市民の図書館・ふじさわ」に業務委託 図書館システムリプレース。IBM eServer iSeriesをサーバとしたCLIS/400(サン・データセンター製)採用 図書館ホームページリニューアル | 武雄市新図書館構想発表 第2次安倍晋三内閣(12/26) |
(文中敬称略)